「薬に頼らず血糖値を下げる方法」の紹介と考察

糖質制限に取り組まないとマズイと思える

この本は、白米(ご飯)を食べない生活の後押しとなります。

現役の医師であり、糖質制限医療推進協会に属する著者自身が考えを改め、実践して結果を残しているという点も説得力があります。

印象に残っている内容の紹介と気づきを踏まえたレビューを掲載しています。

糖質予備軍2000万人の日本

2016年の厚生労働省の調査によると、糖尿病が強く疑われる者の人数は、国内で約1000万人。また、糖尿病の可能性を否定できない人の数も同じ位居るらしく、合計2000万人が血糖値の問題を抱えているのが日本の現状と見られています。

また、糖尿病性腎症による人工透析患者数も年々増加傾向にあるそうです。

本書でも、「食事バランスの炭水化物6割は、ごはんを主食とする近代日本の食習慣から決められたに過ぎない」と、語られています。

現代日本の糖尿病患者が増加傾向にある背景を元に、食生活や治療など、様々な誤認や矛盾点がいくつも紹介されています。

鉄分の必要性

この本を読み、鉄分の必要性を認識しました。

「鉄分と糖尿病がどう繋がる?」

最初は、そう思われるかもしれませんが、鉄は、ミトコンドリアがエネルギーを生産するために欠かせません。

本書の中でも、「鉄は、血糖値を下げるためにも、間違いなく補わなくてはいけない重要な要素」と語られています。

このあたりを掘り下げていきます。

通常はミトコンドリアが働いている

人のエネルギー回路は、ミトコンドリアにより生み出す「ミトコンドリア・エンジン」糖質のみを用いて生み出す「解糖系」の2種類があります。

このうち、メインのエネルギー供給源であるミトコンドリアによる代謝は、非常に効率的な反面、酸素、糖質、脂質に加えて、鉄が不足していると動作しません。

なお、ここで示す糖質は、体内に貯蔵されているものを指します。ブドウ糖を補う必要があるということではありません。

また、ミトコンドリアがメインエネルギーである裏付けとして、人間の体重の1割を占めているほど多い点からも納得できます。

ミトコンドリアは、人間の細胞1個に数百から数千個も含まれているそうです。

それだけ数が多いということは、エネルギーの共有源として、日常的に使われているということがわかります。

しかし、鉄不足に陥るとミトコンドリアが働けなくなるので、代わりにブドウ糖のみでエネルギーを作り出す解糖系が働くのです。

糖質がメインだとバランスはどうなる?

体内に備わっている血糖値を下げる機能は、膵臓から分泌されるインスリンしかありません。

さらに、体内に貯蔵されているブドウ糖は、グリコーゲンという形でわずかだという疑問も解決しなくてはなりません。

本書では、人間本来のメインエネルギーがブドウ糖だとしたら、グリコーゲンが肝臓に100g、筋肉に400gの合計500g程度しか蓄えられていないのは、おかしいと、指摘されています。

計算するまでもなく、糖質の貯蔵量が少ないのは明らかです。

もしも、体重65kgの場合、体内のグリコーゲン総量500gだと体重に対する割合は、0.77%です。

対して、脂質は、体重の20%になるため総量が13kgあります。

人類がサルからヒトへと進化しただけでも500万年という歴史がある中で、メインエネルギーが糖質だったと考えると、進化にかかった年月に比べてあまりにも貯蔵量が乏しいと思わずには居られません。

脳のメインエネルギー源は糖質?

「脳のエネルギー源は、ブドウ糖だけ」というフレーズは、糖類を取り扱う商売をしている業界の謳い文句として、使い古された感じがするほど定番化しています。

これは、半分正解で半分間違っているようです。

脳には、ニューロングリア細胞という2種類が存在します。

ニューロンのエネルギー源はケトン体と乳酸だそうです。また、ニューロンは思考を司る細胞なので脳のメインの働きであることがわかります。ということは、ケトン体は脳のメインエネルギーだと言えます。

後者のグリア細胞は、ニューロンをサポートする細胞でエネルギー源がブドウ糖のみです。

結局、ブドウ糖も必要ではありますが、基礎代謝のような機能維持に必要な分の糖質は、肝臓にグリコーゲンとして貯蔵されている他にも、タンパク質を代謝する「糖新生」でも補えます。

それに、人の体には、グルカゴン、副腎皮質ステロイド、エピネフリンなど、血糖値を上げるホルモンが複数存在しています。つまり、必要に応じて体内でブドウ糖をいつでも作れるのです。

また、脳の活動に関する研究では、糖質を摂取している場合とそうでない場合では、活動量に変化はなかったという研究結果もあるそうです。

ブドウ糖と脂質の違い

脂質は、血管を修復する働きを持ちますが、ブドウ糖によって傷ついた血管を修復するために、補修箇所に集まった脂質が悪者だと考えられてしまいました。

対するブドウ糖は、糖化によっていろんな組織と結合しやすいことが問題視されています。終末糖化産物が増えるのも血中ブドウ糖の増えすぎが原因です。

このことからも、最悪の状況を防ぐために血液内に増えすぎた血糖を排除し、健康維持の役割を担っているのがインスリンとわかります。

インスリンは本来、高血糖という緊急事態にのみ働くホルモンであり、常用することでインスリンの分泌を少なくしたり、アポトーシスという過労死を起こしてしまうそうです。

インスリンは血管を傷つける

さらに、インスリンが細胞に作用すると、細胞内で活性酸素が発生します。

通常なら、酵素の働きで活性酸素は除去されるものの、インスリンが大量に分泌されてしまうと防ぎきれなくなります。細胞や血管が傷つき、動脈硬化を引き越しやすくなるそうです。

結局、血糖値が高くなることでもインスリンの分泌が増えることでも、細胞や血管には好ましくないことがわかりました。

体内のブドウ糖は非常用電源?

さいごに、激しい運動時のエネルギー源について、私の気づきをまとめておきます。

通常、脂肪を分解しエネルギー源(ケトン体)を取り出して活動している私たちの体ですが、激しい運動で筋肉に大きな負荷がかった時は、酸素の供給が間に合わなくなります。

そこで、無酸素状態でもエネルギーを生み出せるブドウ糖が使われるのです。

しかし、激しい運動時でブドウ糖と消費する組織は、筋肉の他にもう一つ存在することを失念していました。

赤血球です。

高負荷に消耗した筋肉を回復させるために大量の酸素が必要となるので、心拍が上がり血流が早くなります。この時、酸素を送り届ける赤血球も負荷がかかり消耗している状態です。

ここで注意すべきなのは、赤血球には、ミトコンドリアが存在しないことです。

高負荷時の筋肉と同様に、赤血球は、ブドウ糖しかエネルギー源にできないのです。

これらを整理すると、肝臓に100g、筋肉に400gほど貯蔵されているグリコーゲンは、激しい運動時の筋肉と赤血球に優先的に使わせるための備えだと考えられます。

つまり、体内にブドウ糖が貯蔵されている目的は、500万年というヒトの歴史の大半を占める野生生活の中で、肉食獣から襲われた時に逃げるため、もしくは、戦う場合に備えた非常用電源と考えた方が無難に思えます。

筋肉がどのようにエネルギーを使い分けているのかを踏まえても、通常時はケトン体、非常時がブドウ糖なのだろうと思えてなりません。

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