「炭水化物が人類を滅ぼす」の紹介と考察

細胞レベルで紐解く糖質の関係

この本は、糖質ゼロが人間本来の食事だったということを証明するために、人類の歴史を遡った研究結果を元にした持論を展開されています。

本書によると、人類史の99%は糖質の少ない食生活だったそうです。

なぜ糖質に依存するようになったのかを細胞の生い立ちから調べ、因果関係が詳しく説明されています。

特に参考になった内容をご紹介していきます。

糖質過剰摂取が低身長、不健康の原因だった

これまでの歴史調査によると、日本人の平均身長は、昭和の前半30年より弥生時代の方が高いかったそうです。

これが何を意味するのか?

そこには、戦時中の食糧事情との関係がありました。

終戦日(昭和20年)から、10年後のこと。戦時中、白米ばかりを食べていた軍人に脚気患者が多く居ました。

弥生時代と比べて、昭和の日本は、穀物主体の食生活で動物性タンパク質が不足していたことが低身長に影響をしていたと考えられます。

事実、骨の成長には、カルシウムだけでなくコラーゲン(タンパク質)も必要なことからも容易に納得できます。

また、穀物主体の食生活になったのと同時期に、乳幼児が離乳時に死亡する割合が上昇したことが、各地の遺跡調査から確認されているそうです。

500万年の人類史が主体

本書では、糖質主体の食性は、ヒトが長年続けてきたものではないことを説明するために、500万年の人類史を遡っています。

動物の共通祖先である単細胞生物の話から始まり、多細胞生物の進化の過程、27億年前に台頭したシアノバクテリアの大繁殖。

糖質を摂取するとドーパミンが分泌される理由、脳のメカニズム、ヒトとチンパンジーの違いなど、多岐にわたり話が展開されています。

それらを含めて、ヒトの食生活がどのように変わったのか、なぜ糖質に依存するようになっていったのかなど、わかりやすく読み解くことができます。

糖質の問題を解決するために、人類の歴史を遡るという発想を科学的根拠をなどを踏まえて研究し、一つの結論を導き出すという忍耐力は、なかなか真似できるものではありません。

遊動生活(狩猟採集)と人類の食性

人類史500万年のうち495万年前まで、ヒトは、遊動生活をしていたそうです。つまり、定住せず移動しながらの生活です。

これは、食料を確保する最適な方法であると同時に肉食獣を避ける上でも有効だと予測できます。

では、私たちの祖先は、何を食べていたのでしょうか?

先史時代の人々は、移動しながら昆虫や小動物を主に食べてきたそうです。その理由は、食料がそこらじゅうにあったからです。

つまり、最も手に入れやすい食事だったのでしょう。

小動物を食べていたというのは、イメージが沸きやすいですが、昆虫も高タンパク質であることで注目を集めているだけでなく、中でも、幼虫は栄養の塊です。

先住民などを特集する番組でも良く見ることからも容易に想像できます。

また、親指がものを器用に持てるように進化した理由は、動物の死骸の骨を砕く石を持つためと言われてます。筋力で大型の草食獣にも勝てない人間は、肉食獣の食べ残しも食料としてきたそうです。

7万年前、狩猟に目覚める

狩猟に目覚めたのは、今からおよそ7年前。この頃から道具を作る知恵が芽生えはじめたとされています。

ここに、ドーパミンの話が関与してきます。

共生関係が強まり人口密度が高くなると、ヒトの脳では、ドーパミンの分泌が増え始めたそうです。ドーパミンはシナプスの発達を促し、道具を作る発明家的な人類が現れ始めたそうです。

ドーパミンの分泌量が増加するのは、ヒトやアリなど、社会性を持つ動物特有のものとの説明もありました。

アリも個体数の密度が高くなると脳が興奮状態となり、ドーパミンの分泌は活性化されるそうです。

遊動生活を終える2万年前頃になり、ようやく狩猟ができるようになります。その後、地球環境の影響(最終氷期)で定住化が進みます。

1万2千年前、加熱したドングリを食べる

ヒトは、木の実が食べられることを知ります。

  • アーモンド:生で食べられる
  • ピスタチオ:生で食べられる
  • ドングリ:生では不味い

火の扱いを覚え始めた人々の中に、生では食べられなかったドングリを焼いて食べるという発想を思いつきました。

この出来事が後に糖質依存の世界を作るきっかけになったと述べられています。

焼いたドングリは、加熱により甘みが現れます。また、食べた人間は、高血糖状態になると、ドーパミンの分泌が促されたのです。

これは、血液を正常に保つ恒常性という働きが関係しています。

恒常性の働きを担う脳の視床下部では、血糖値を下げるために動いた時、A10神経からドーパミンが分泌されるという作用が起こりました。

  1. 生のドングリを食べる→不味い
  2. 不味いから火に入れて焼いてみる→甘みが増す→食べられる
  3. 加熱により糖質が吸収されやすくなり、高血糖になる
  4. 脳の視床下部が血糖値を下げるために反応する
  5. ドーパミンが分泌される→幸福系の脳細胞に受容される

一部が幸福系の細胞に受容されて、「おいしい」と感じてしまったことで、加熱デンプンに魅了されていったという内容です。

加熱ドングリと果実の”糖質”の違い

なぜ、果実なら食べても良いのでしょうか?

加熱したドングリは、ブドウ糖の元である炭水化物が多いことに対し、原生する果実は、果糖が主な糖質だったと考えられています。

果糖は、血糖値を上げることなく速やかに肝臓で分解され脂質として吸収される性質があるため、血糖値を上げることもないので、ドーパミンの分泌も促しません。

また、一部の果糖は、肝臓でブドウ糖に代謝されますが、必要な量のブドウ糖を確保した残りは、中性脂肪として蓄えることができます。

しかし、現代の果実は、品種改良されて糖度が高くなっていることでショ糖の割合が多いので、当時の果物とは全く別物と言えます。

同じく、白米なども甘さ重視のものが増えていますが、全てブドウ糖の総量が増している事実に変わりありません。

1万年前、農耕開始

定住化したヒトは、自分たちの祖先が何を食べてきたかを知りません。代々受け継ぐという知恵は、まだ無かったようです。

わかるのは、本能的な味覚の違いだけでした。

  • 「酸っぱい」 → 腐った肉(×)
  • 「苦い」 → 毒(×:植物のアルカロイド)」
  • 「甘い」 → 食べて良い(○)」

人々は、定住化によって住居の近くで食料を確保しなければならないという課題に直面しました。

そんな中、家畜のヤギのエサだった野生のコムギを焼いて食べたヒトが現れます。ドングリの応用です。そして、焼いたドングリの時と同じように甘みを感じ食べられることに気がつきます。

こうして、穀物が新たな食料に加わりました。

野生のコムギは、人々が居を構えるエリアの至る所で自生していたため、理想的な食料になったのです。そして、農耕に目覚めます。

農耕の起源は、今からおよそ1万年前と言われています。

これを人類の歴史に当てはめてみると、穀物主体の食生活は、サルからヒトへと進化してから歩んできた時間全体の0.2%に過ぎません。

それだけの短期間で、ヒトの体が糖質を処理できるように進化しメインエネルギー源にできたという可能性は、ヒトの歴史から見ても少し強引な結論であると理解することができます。

デンプンは、植物の備蓄倉庫

本来、デンプンは、穀物の根や実に備蓄されている非常用エネルギーです。また、生のままでは、動物や昆虫には吸収されないという特徴があるそうです。

しかし、加熱ドングリのように、火を通したデンプンは吸収されるようになります。

植物の貯蔵エネルギーであるデンプンが加熱によってヒトの食料となり、現在の穀物主体の時代となっています。

また、ヒトが依存している物質は、どれも植物由来という共通点があります。

人類の食の歴史、脳の仕組みと依存性、脚気や乳幼児の死亡率の推移、身長の変化など、様々な方向から糖質のもたらす危険性について理解することができました。

生きるとは何か、糖質を通じて考えさせられる一冊です。

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