「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」(新版)の紹介と考察

日本に糖質制限食の概念を広めた人

日本に糖質制限の認識を広めた第一人者である江部康二先生の本です。

本書は、日本初の糖質制限食を理論解説した本として糖質制限が生まれたきっかけと言えるかもしれません。

こちらの本は、2005年に同タイトルの本が出ている改訂版(新版)として、2014年に初版が出ています。

初めて、江部先生を知った時は、ご自身が糖尿病ということから「本当に信用できるのだろうか」という疑念がありましたが、本書によって印象が180度変わりました。

米国糖尿病学会が糖質制限食を認めた

本書によると、2013年に米国糖尿病学会が糖質制限食を糖尿病の治療食の一つとして公式に認めたそうです。

さらに、同学会が「唯一無二の糖尿病食事療法はない」と明言したとあります。

つまり、それまでに日本の糖尿病外来などで指示されてきた糖尿病治療食を根本から覆したということにもなります。日本の糖尿病学会が基本的に米国のデータを元にしていることからも言えます。

江部先生自身も過去には、糖尿病学会のガイドラインに基づく治療法を続けていたそうですが、糖尿病が悪化する結果ばかりだったとあります。

疑問を感じ糖質制限食に切り替えたところ、インスリン注射が不要となるほど患者さんの数値が改善するなど、明らかな変化があったことについて書かれています。

糖質制限で食べていいもの、ダメなもの

本書では、実際に糖質制限を始めるにあたり、何が良くて何がダメなのかを知ることができます。

糖質制限食を個人でも実施できるように、食材の献立に関する情報も豊富に掲載されていました。

しかし、ダメな食品に含まれているからと、いきなりすべてを制限するとストレスとなる恐れがあるため気をつけた方が良いと思います。

私個人としては、牛乳やチョコレートは常用しています。

その分、ほかの食品には気をつけるようにしているため、糖質制限のうちの制限しない側の食品という解釈です。

ただし、脂質の多い食品と糖質の多い食品を同時に摂るのは、最悪ということが書かれています。

理由は、血糖値を上げることで中性脂肪も上げてしまうからだそうです。

糖質制限の始まりは100年前

今から100年以上前、糖質制限が提示されていたことを知りました。

1916年に糖尿病学の父と呼ばれたジョスリン博士により「ジョスリン糖尿病学」の初版が出版されました。

この本には、「炭水化物は、総摂取カロリーの20%程度が標準」と書かれていたとあります。

しかし、初版から5年後の1921年、インスリンが製造できるようになりました。すると、ジョスリン博士の提唱は軽視されていったそうです。

炭水化物摂取量の増加

1950年には、炭水化物の総摂取カロリーは、40%へと変更されました。さらに、1971年には45%となり、1986年には60%と増えていきました。

この事実のみを汲み取ると、見えてくるのは、インスリンを世に広めるための基盤として、炭水化物の摂取量が都合良く変えられたという可能性です。

また、本書でも触れられていますが、膵臓から分泌されるインスリンがあっても耐糖能異常があると、血液中のインスリン濃度が高くてもブドウ糖が細胞内に入らない高インスリン血症が起こるそうです。

一型糖尿病ならインスリン注射が有効な手段となります。

しかし、先天性の無い二型糖尿病と診断されて糖質制限ではなく糖質摂取の維持を指示され、その結果、血糖値が上がったらインスリンを使うという状況が何を意味するのか、考えるまでもありません。

精製炭水化物のGI値

医学会では、本書の初版が出た2014年までは、高脂肪食が糖尿病の原因とされてきたそうです。

対して、江部先生は、精製炭水化物の常食こそが元凶と述べています。

精製された炭水化物と言えば、白米、食パン、白砂糖、小麦粉などがありますが、これらを食べる機会が増えたこととともに、糖尿病が右肩上がりで増えていることは容易に想像がつく話です。

日本では、精製された小麦の消費量が3.5倍に増加しているそうです。

尚、脂質が悪者とされた理由は、慢性的な高血糖により傷ついた血管壁を修復する材料がコレステロールだったからと言われています。

脂質は、助けに入ったのに悪者扱いされてしまったのです。

フルマラソン選手は脂質代謝能力が高い

本書によると、フルマラソンを走れるような選手は、筋肉機能が優れているだけでなく、エネルギーを生み出す脂質代謝も優れているのではと述べられています。

なので、早く走り続けられるマラソンランナーは、激しい運動で第一に使われるブドウ糖と併用して、ケトン体もエネルギー源にできるというのが江部先生の見解です。

激しい運動や繰り返し筋肉を使っている時は酸素の供給が間に合わなくなり、体内のブドウ糖が使われやすくなりますが、体内に蓄えられているグリコーゲンの総量は、多くないので燃料切れを起こす危険があるのかもしれません。

速筋はブドウ糖、遅筋はケトン体?

さいごに、私の気づきを付け加えておきます。

筋肉には、速筋と遅筋という2種類がありますが、ここに、ブドウ糖とケトン体の使い分けがあると感じました。

まず、速筋(白筋)は非常時に働き瞬発的な力を生み出します。酸素を必要としないので、使えるのはブドウ糖のみです。

ブドウ糖は、筋肉に400gほど蓄えられています。

一方の遅筋(赤筋)は、酸素を必要とする筋肉で普段からも使われているので、ケトン体をエネルギー源にできます。

尚、遅筋が赤筋とも言われている理由は、ヘモグロビンが運んできたミオグロビンの量による赤色に由来するそうです。

私の見解は、江部先生とは少し異なるかもしれませんが、フルマラソンを走れる選手は、繰り返し筋肉を鍛錬することで次第に遅筋の量が増えるのだと思います。

酸素を使える、有酸素運動できる筋肉が増えるということです。

遅筋が増えて速筋の負担割合が軽減すれば、ブドウ糖の消費が抑えられ、ケトン体を効率よく取り出せるようになるという理屈です。

実際、マラソンランナーは、長距離に慣れてくると短距離でスピードが出せなくなるそうです。

また、心肺機能が強化されて一度に取り込める酸素の総量が増えることで、有酸素運動の効率も上がり、無酸素運動後の回復も早くすることができます。

ちなみに、無酸素運動で動く速筋にも、ミオグロビンは少なからずあるそうです。

マラソンにかかわらず、プロのアスリートが長時間動けたり瞬発的な力を発揮し続けられるのは、体内に貯蔵してあるエネルギー源を効率よく活用できるように、トレーニングによって体が最適化していった結果とも言えるのではないでしょうか。

糖質制限にどう活用するか?

本書の内容からは完全に逸脱しますが、この速筋と遅筋の仕組みを糖質制限に活かすとすれば、トレーニングメニューの決め方です。

よく選択されるウォーキングだけでは、遅筋しか使われないのでブドウ糖はあまり減らないことがわかります。

対して、筋肉トレーニングを組み入れれば、速筋が使われるためブドウ糖の消費を促せると言えます。

ウォーキングを数ヶ月続けてもHbA1cの値にあまり改善が見られない場合、筋肉内のブドウ糖の消費に最適な筋肉トレーニングを行うという方法もあります。

速筋を意識したトレーニングを取り入れて、糖質制限食にプラスしていけるのが理想かもしれません。

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